更新日: 2024年05月01日

【イベントレポート】録音専用列車イベント第三弾!209系1000代を使用したイベントのこだわりに迫る!|常磐線の録音専用列車イベント

我孫子運輸区が主催し、毎回好評をいただいている鉄道イベント『常磐線の録音専用列車イベント』、第三弾は209系1000代を使用して2024年1月28日(日)に開催されました。この記事は、常磐快速線の運行に携わるJR東日本社員たちがこだわり抜いたイベントの様子をお届けします。

始まりは我孫子から。オリエンテーションにも「こだわり」が

2024年1月28日(日)朝9:30、我孫子駅前。
ここから今回のツアーが始まります。
過去2回実施した185系に続く、録音専用列車の第3弾は209系という、新たな形式での実施になります。
開始前にオリエンテーションが行われるのですが、そこには謎の機器が。
103系で使用されていた放送機器『常磐線の録音専用列車イベント』
こちらはオリエンテーションのためだけに用意された放送装置。かつて常磐線でも走行していた103系で使われていたものだそうです。

『常磐線の録音専用列車イベント』はオリエンテーションの「音」へこだわっています。ちなみにこちらの機器は、JR東日本社員が個人的に保有しているものとのことです。
我孫子駅に停車する209系1000代、『常磐線の録音専用列車イベント』
オリエンテーション終了後、早速列車に乗車していきます。

209系1000代は1999年にデビューした形式で、2018年まで常磐線各駅停車、東京メトロ(デビュー当時は帝都高速度交通営団)千代田線で運行されてきました。
その後2019年からは中央線快速電車で活躍しており、帯色も中央線快速のラインカラーに合わせたオレンジ色となっています。
今回は約5年ぶりの「里帰り」となります。
209系1000代の特徴はVVVFインバータ装置が「未更新」であること。
特徴ある三菱電機製のGTOサイリスタ素子が採用されたVVVFインバータ装置の音は、一度聞くと印象に残ります。

まさに録音専用列車にふさわしい車両と言えるかと思います。
我孫子駅を発車し、列車は北柏にて一旦停車。
早速録音機材の設置が開始されていきます。
209系1000代の床、録音機器『常磐線の録音専用列車イベント』
今回も185系と同様、「録音専用車両」が設定されました。
参加者は5号車、6号車に乗車。
2号車、3号車、8号車、9号車は録音機材のみが乗車できる車両になります。
録音専用車両『常磐線の録音専用列車イベント』
「Recording Only」という通常の列車では見られない表示
209系1000代の座席と録音機器『常磐線の録音専用列車イベント』
とある参加者にお話しを伺ったところ、今回の列車で最適な音を録るため、中央線内で乗車を重ね、最適な位置を探ってきたとのこと。
乗務員のこだわりが詰まった録音専用列車は、参加者の皆さまのこだわりも本気です。

もちろん車両間の貫通扉は閉められ、冷暖房はオフ。
企画者、参加者共に録音に全力の列車は、一路上野駅へ向かっていきます。

209系1000代、「本気の走り」を見せる

北柏を出た列車は常磐快速線をひた走ります。

今回の録音専用列車は午前の部は「通過中心」、午後の部が「停車中心」のパターンが組まれました。
午前は高速走行を重視。形式の最高速度である110km/hで駆けていきます。

ちなみに常磐線各駅停車で活躍していた頃は最高速度90km/h、現在活躍している中央線快速の最高速度は100km/hのため、お客さまが乗車した状態での110km/h走行はほとんど例がありません。

かつてない209系の「本気の走り」を興奮とともに体感しました。
209系1000代『常磐線の録音専用列車イベント』
取手駅、LED表示『常磐線の録音専用列車イベント』
ちなみに車内のLED表示も対応。
今では見られることのない表示たちも堪能することができました。

午後の部は一味異なるルートで実施

午前の部は我孫子~上野~取手~我孫子を走りましたが、午後は我孫子を発車してまずは取手へ。
取手では引上線まで走行していきます。
取手駅引上線『常磐線の録音専用列車イベント』
我孫子運輸区の乗務員曰く、「取手駅の引上線へお客さまを乗せて運行したのは、誤ってご乗車されたお客さまを除くとおそらく初」とのこと。

すぐ横を通過していく特急や常磐線中距離列車などを見ながら、機材設置が行われていきます。
209系1000代『常磐線の録音専用列車イベント』
午後の部は前述の通り「停車中心」の運行パターン。
取手を出ると我孫子、柏、松戸、北千住、南千住、三河島、日暮里、上野の順に止まっていきます。
209系常磐線走行シーン『常磐線の録音専用列車イベント』
午後は午前と違い、「本気のブレーキ」を披露。ブレーキ7ノッチで減速音を奏でました。

209系1000代は地下鉄線への乗り入れを考慮して加速度、減速度ともに他路線の車両よりも強化された仕様となっており、今回はその性能を余すところなく披露していきます。

音の収録を優先し、乗り心地はあえて考慮せずに運行。
これも「録音専用列車」ならではの演出です。

ちなみに今回の担当運転士は常磐線各駅停車時代にも209系1000代を運転していたとのこと。
車両を知り尽くす運転士ならではのプロのブレーキングでした。


午前、午後ともに上野駅では地上ホームの13番線に発着。
オレンジ色の車体がホームに映えます。
上野駅13番線、209系1000代『常磐線の録音専用列車イベント』
列車は復路も常磐快速線の各駅に停車し、柏駅にてツアー終了となりました。

企画を担当した我孫子運輸区社員からのメッセージ

我孫子運輸区主催の録音専用列車も第3弾を迎え、今回は要望が強かった209系1000代を使用して運転いたしました。

過去に実施した録音専用列車での経験を活かし、列車ダイヤから運転操作による演出など最大限「録れ高」を追求いたしました。

午前の通過メインの運転では、営業運転で出すことない110km/h運転を実施。午後の停車メインの運転では常磐緩行線時代を彷彿とする「詰めたブレーキ」を実演。
いずれも常磐緩行線時代に209系1000代のハンドルを握っていた運転士が担当致しました。
その他、流しノッチやATC頭打ち再現など、細かい演出も入れさせていただいております。貴重なGTOサウンドと共に、お楽しみいただけていれば幸いです。
※運転操作において非常ブレーキを扱っていたのでは?といったインターネットへの書き込みがございますが、人立ち入りによる非常停車以外は全て常用ブレーキです。

一方で、線路内人立ち入りや駅での混雑など、結果的にご参加いただいたお客さまにもご迷惑をおかけいたしましたことをお詫び申し上げます。
今後、本線を活用した録音専用列車の設定は難しくなりましたが、何らかの方法でイベントを企画していきたいと考えております。

今回の企画で209系1000代も「里帰り」を果たすことができました。
これは当区のみならず、関係各所の担当社員の熱意と尽力があったことをこの場を借りてお知らせいたします。
もしよろしければ、また我孫子運輸区主催のイベントにご参加いだければ幸いです。

改めまして、この度は我孫子運輸区主催「209系1000代 録音専用列車で撮る常磐線快速電車」にご参加いただきましてありがとうございました。

イベント終了後の解説放送について

イベント終了後には本イベントの解説放送が行われました。
本記事では、文案の全文を掲載させていただきます。
ご参加いただいた皆さまはイベントの振り返りに、惜しくもご参加いただけなかった皆さまはスタッフのこだわりをぜひご覧ください。
(以下は放送文案であり、当日行われた放送と若干語尾などの言い回しが違う部分はご容赦ください)

209系録音専用列車放送文案(午前)

本日は209系1000代録音専用列車午前の部にご参加いただきましてありがとうございました。
ここで午前の部のダイヤ設定と運転操縦について解説いたします。
午前の部は通過メインでできる限り高速で走行できるようにダイヤを設定しました。
まず上り9430Mから解説いたします。
9430Mは柏と北千住で運転停車し先行列車との間隔を調整、高速で走行できるようにダイヤを設定しました。
北柏発車では流しノッチで起動しました。
柏発車時は5ノッチで力行し110km/hmまで一気に加速しました。
柏~北千住間では最高速度110km/hで運転しました。
南千住進入の際はATC常用ブレーキを再現して減速しました。
南千住通過後は90km/hまで力行しブレーキ7段に入れATCの頭打ちを再現しました。

続きまして下り9431Mについて解説いたします。
9431Mにつきましても三河島と北千住で運転停車し高速で走行できるようにダイヤを設定しています。
北千住発車時はVVVFインバータの音に合わせて1ノッチずつ刻みながら力行しています。
北千住~取手間は最高速度110km/hで運転しました。
我孫子駅通過時は100km/hを維持、我孫子駅構内の取手寄りにある定尺レール区間を100km/hで通過するように運転していました。
午前の部の解説は以上となります。
本日は我孫子運輸区主催209系1000代録音専用列車午前の部にご参加いただきましてありがとうございました。

209系録音専用列車放送文案(午後)

本日は209系1000代録音専用列車午後の部にご参加いただきましてありがとうございました。
ここで午後の部のダイヤ設定と運転操縦について解説いたします。
午後の部は停車メインでできる限り停車駅を多くしVVVFインバータの加減速音を多く収録できるようにダイヤを設定しました。
まず上り9482Mから解説いたします。
9482Mは天王台を除いた常磐快速線内の全ての駅に運転停車を設定しました。こぼれ話としまして天王台は当初停車する予定でしたが、天王台を停車にすると我孫子で後続列車との間隔が詰まってしまいダイヤが設定できなくなることが判明し通過になりました。
我孫子停車の際は、我孫子手前にある定尺レール区間を可能な限り高速で通過するためにブレーキを詰めています。ブレーキ7段から停車寸前にブレーキ1段に緩める1段制動1段緩めで停車しました。
我孫子発車時はVVVFインバータの音に合わせて1ノッチずつ刻みながら力行しています。
柏~日暮里間の各停車駅でもブレーキを詰めて停車しています。
続きまして下り9483Mについて解説いたします。
9483Mにつきましても三河島、北千住、金町、松戸、馬橋に運転停車しなるべく多くVVVFインバータの加減速音を収録できるようにダイヤを設定しました。
上野駅発車の際は流しノッチで起動しました。また、流しノッチ後は刻みノッチで力行しました(9482M我孫子駅場面では下り特急が被ってしまったため急遽追加)
三河島発車後は90km/hまで力行しブレーキ7段に入れATCの頭打ちを再現しました。
金町進入の際はATC常用ブレーキを再現して減速しました。
三河島、北千住、松戸の各停車駅ではブレーキを詰めて停車する予定でしたが、人立ち入りによるダイヤ乱れのため松戸駅は警戒現示での進入となってしまいました。
馬橋場内信号機に対する減速はATC常用ブレーキの挙動を再現しました。
最後に列車番号は209系の編成番号を意識した列車番号を設定しました。
午後の部の解説は以上となります。
本日は我孫子運輸区主催209系1000代録音専用列車午後の部にご参加いただきましてありがとうございました。


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